致知出版社から出させていただいている
夏川が現代語訳した古典。
『風姿花伝』が
重版になっていたようです。
2014年の発行から
これで4刷となりますが、
1400年に書かれた本も
だんだんと『武士道』や『茶の本』に並ぶ
ロングセラーになってきました。
コロナ禍の厳しい時代にあって
ありがたいことですね。
☆
本書は能楽の大成者である世阿弥が
能を学ぶ人のために書いた秘伝。
でも、書かれていることは
現代のビジネスパーソンにとっても
非常に価値のあることです。
まさに「日本最古のビジネス書」と
言ってもいいでしょう。
そんななかで流石、世阿弥さん、
今のように「普段と違う状況」において、
どのような心構えでパフォーマンスをするかを
ちゃんと指南しています。
たとえば、
「お客さんがいつもと違う」なんていうときです。
平常のように「わかってくれるお客さん」でなく、
よくわからないけどやってきたような、
ちょっと荒っぽいようなお客さんが、
会場で騒いでしまっている。
さあ、どうしよう……ですが、
理解してくれなければ理解してくれないでいい。
価値がわかってくれない人を、
ときには威圧してもいいから
「わかってくれるお客さん」を喜ばすことを
最低限やりなさい……ということですね。
あるいは、お客さんがまったくいない場合。
さらには平常時のような会場でなく、
山奥の寺であったり、地方の小さなところで
演じざるをえなくなったらどうするか?
そのときも同じ、
自分の価値をわかってくれる人が
たった一人でもいいから、
その人に対してベストな演技を
小さな舞台で心がけなさい……ということです。
この辺は佐渡へ島流しにあっても
流刑地に能を広めていた世阿弥さん。
実際に困難に負けず、
自身がやっていたことなのでしょう。
☆
この世の中では
「運気」にしろ、人々のニーズにしろ
絶えず「移ろっていく」ものである。
今は悪くても、好機は必ずやってくるから
どんなときも現状でできるベストを続け、
あとはタイミングを待ちなさい、と。
まさに世阿弥さんの言う通り、
600年前から、私たちのやるべきことは
すでに説かれていたわけです。
「風姿花伝」、読んでない人は、
ぜひ手に取ってみてくださいね。
[夏川賀央の「古典学のススメ」]