【賢者の言葉11】勝って兜の緒を締めよ

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「神明は唯平素の鍛練に力め、
戦はずして既に勝てる者に勝利の栄冠を授くると同時に、
一勝に満足して治平に安ずる者より直に之を褫ふ。
古人曰く勝て兜の緒を締めよと」

「神様は、普段から努力して自分を鍛えることで、
戦う前からすでに勝っている者に、
ちゃんと勝利の栄冠を授けるものだよ。
しかし、1勝に満足して、努力を怠る者からは、
その栄冠を奪う。
だから昔から、『勝って兜の緒を締めよ』と
言うではないか」

こちらは、明治時代の将軍、
東郷平八郎さんの言葉ですね。
連合艦隊の解散式での言葉。
画像は横須賀、「三笠公園」で保存されている
戦艦「三笠」と東郷さんの像ですね。

こちらを紹介するのも、
今日は困難な国防戦を強いられているウクライナが
ロシア艦隊の旗艦である
巡洋艦「モスクワ」を沈めたというニュースがありました。

思い出すのは、日露戦争のころ、
数的不利だった東郷さん率いる日本艦隊が、
ロシアのバルチック艦隊を撃破し、勝利をつかんだ話です
案の定、ネットでも
「ウクライナにはトーゴーがいるんじゃないか」という話が
賑わっていました。

実際のところ、
どれだけウクライナ軍の功績があったかはわかりませんが、
おそらくは伝説化した
戦艦三笠の「東郷ターン」のように
(敵眼前で風下と風上を入れ替える旋回ですが、
本当はそんなことしていないらしい)
功績は上乗せして語られるんでしょうね。

そんな戦術以上に、人格面でも
敵にすら尊敬されていた東郷平八郎さん。
この公園と「戦艦・三笠」は、
アメリカ海軍の支援でずっと保存されているとのこと。

じつは船がロシアを向いていることもあって、
ソ連時代からかの国は、
この船の解体を要求し続けているそうです。
それでもアメリカの協力があって、
日本は断固として突っぱねているんですね。

とはいえ「勝って兜の緒を締めよ」に戻れば、
日露戦争時、日本は戦費を使い果たしての
ギリギリの勝利だったにもかかわらず、
戦後は軍国化をさらに推し進め、
第二次大戦へ突入していきます。

その点ではむしろ、現在のロシアに近いことを
やってしまっていたわけです。
東郷さんは、当初からそれを心配していたわけですね。

戦争のような悪手でも、
大切なのは「何を目的に遂行するのか」です。
それを見誤ると、見かけは勝っていても、
結局はすべてを失ってしまう。
古典的な名著、クラウゼヴィッツの『戦争論』でも
述べられていることです。

なお、ウクライナの立場はといえば、
継続している内戦があったとはいえ、
日露戦争時の日本でもロシアでもなく、
両者から侵略を受けていた清国と同等なのでしょう。
別に望んで戦っているわけではない。

そのことはちゃんと、外側にいる私たちも
認識しないといけないですね。

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