「私たちが見ているもの、
あるいは見ていると思っているすべてのものが、
夢のまた夢であるに過ぎない」
こちらは10月7日が命日の作家、
エドガー・アラン・ポーの言葉ですね。
サスペンス小説、あるいは推理小説の元祖と
よく紹介されます。
『黒猫』とか『モルグ街の殺人』などは、
誰もがどこかで読んだこともあるでしょう。
彼が亡くなったのは、今から73何前のこと。
40歳という若さでしたが、
その名声にも関わらず、
彼は非常に恵まれない人生を送ったことでも
知られています。
どうしてかといえば、
そこにはアラン・ポーさんの、
大酒飲みで、ギャンブル好きな悪癖も
大きく影響していました。
ただ、それでも本が売れれば、
お金に苦労することはなかったのではないか?
残念ながら彼の時代、
アメリカで商業出版はほとんど成立しておらず、
彼のような娯楽作家が
ペンのみで生計を立てるのは
非常に難しかったそうなんですね。
書いても書いても、お金にならない。
最愛の妻も、貧乏な生活から病気になり、
若くして死んでしまう……。
お酒やギャンブルにのめり込んだのも、
そんな運命に悲観したことがあったのでしょう。
当時、彼の作家生活が苦しかったのは、
出版業界そのものが、
まったく育っていなかったことが原因にあります。
自堕落だったアラン・ポーさんですが、
この点に関しては自らが編集者となり、
雑誌を創設し、出版社を立ち上げ、
文章を書くことで作家が生きていける構造を
一生懸命に作ろうとしたわけです。
彼の活動は死後になり、名誉回復とともに、
多くの後継者たちによって実現しました。
私もその恩恵にたまわっているわけですね。
本当に出版社さんや、エージェントさんや、
プロデューサーさんに恵まれた
今の時代に生まれてよかったと思います。
しかしながら、出版業界が傾いている現在は、
ポーの時代に逆戻りしていることを
意味しているわけです。
そんなふうにしては絶対にいけない。
過去の偉人に苦労を、私たちも戒め、
アイデアを出し合っていかなければいけないなと
心から思いますよね。