夏川が読んだ本ですが、
仕事の関係もあって、読み直している古典です。
『歎異抄』ですね。
こちらは金山秋男先生が現代語訳している
致知出版のシリーズ。
私が訳した『茶の本』の
少し前の2013年に出版されています。
『歎異抄』といえば、
鎌倉時代に浄土真宗を開祖した
親鸞聖人の教え。
弟子の唯円さんがまとめたものとされます。
意外に注目されるようになったのは、
明治以後のことなんですね。
特別に有名なのはやはり、
「善人なをもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや」
という言葉でしょう。
解釈はいろいろありますが、
「そのままで何も問題もない善人ですら、
学ぶことで救われた気分になるのだ。
根が悪人だったら、それこそ人生、
学びを得て感動することの
オンパレードではないか……」と。
「人間は不完全だから幸福なんだよ」と。
ようするに
「そのままで全く問題ないじゃないか」という
ゆるいことこの上ない教えなんです。
戦乱の世だった鎌倉時代より、
むしろ現代に相応しいのではないか。
まあ実際、後の時代のほうが、
広く読まれているわけですし。
こんな話があります。
親鸞師匠が、唯円さんに言うのです。
「お前は、俺の言うことを信じるかい?」
当然、唯円さんは言います。
「師匠のことは、誰よりも信じます!」
「本当?」
「本当です!」
そこで親鸞聖人は言うのです。
「じゃあ、これから町へ降りて、
1000人ばかり人を殺してきてはくれないか?」
「えっ? 冗談でしょう?
そんなことができるわけなじゃないですか!?」
「だろ? お前はオレを信じていると言うけど、
だからといって、
世の中のルールに背くようなことはしない。
それは師匠に傾倒する以前に、
しっかりと阿弥陀如来に守られて
正しい道を歩くようにうながされている
ということなんだよ」
つまりは「誰が何を言おうが
自分が選ぶものは、
ちゃんと神様が導いてくれている最善の道である」
ということ。
もう「教え」だとか「ノウハウ」のようなものすら、
超越してしまっているんですね。
これほどラクな生き方論もないかもしれない……。
簡単に読める本が何冊もありますので、
自己啓発書が好きな人は、
一度読んでみるといいかもですね。