「部品あたりのコストが最小になるような複雑さは、
毎年およそ2倍の割合で増大してきた」
1965年に提示された技術者による、この論文。
のちにこの言葉は、
「一つの回路上の半導体は、2年ごとに倍になる」
と解釈されます。
つまり、同じ大きさのコンピュータであっても、
中で使われる半導体は2年で倍、4年で4倍、
6年で8倍、8年で16倍と進化していく……。
それだけコンピューターの世界は、
高性能化、小型化していくという予測だったのですが、
これを唱えたのがゴードン・ムーア氏で、
予測は「ムーアの法則」と
呼ばれるようになっているわけです。
先日の24日、ムーアさんは94歳で
お亡くなりになったとのこと。
一時代を築いた方は、自分の予測を
どのように捉えていたのでしょうか?
ムーアの法則の3年後、
彼はアンドリュー・グローブさんらと、
半導体企業「インテル」を創業します。
そんなに古い会社だったのか……と
ちょっと驚きますが、
マイクロソフトが躍進してきた時期、
インテルも飛ぶ鳥を落とす勢いで
世界トップ企業の一つに浮上していったわけです。
その過程、会長を務めていたムーアさんは、
「自分の予測を超える速度で、
半導体事業は進化した」と振り返っています。
確かにパソコンが小型化するだけでなく、
時代はスマホへ、
さらにそのスマホも薄く薄く……と、
世の中は大きく変わってきました。
ところが一方では、事業の進化に伴い、
最初は日本が、
その次は韓国や台湾の企業が台頭し、
インテルのシェアを奪っていったわけです。
今はサムソンのほうが上を言っているのだろうか。
この「ムーアの法則」、2010年代で、
すでに「限界がきている」ということも
言われています。
いろいろ理由はありますが、
このままだと半導体が原子レベルにまで
小さくならなければいけなくなる。
それは物理的に無理だと……。
ただ一方では、それを凌駕する技術も
開発されるのではないかと考える声もあります。
ただ、自ら法則を実現すべく
ベンチャーを立ち上げたムーア氏、
説きたかったのは、
「それに向けて挑戦を続けることこそ重要だ」
ということなのでしょう。
将来を予測したから彼はスゴいのではない。
予測した将来を自ら作り上げることこそ、
私たちがやるべきことであるわけです。