「またこの場所で
本と人が出会う その時まで」
この貼り紙、わざわざ見に行った方も
案外と多いのではないでしょうか?
3月をもって閉店しました、
東京駅のそばにあった
「八重洲ブックセンター」ですね。
ビルごと、取り壊しになるようです。
長く愛された、この書店、
東京にお住まいの方、またビジネス書を愛する方には、
愛着のある方も多かったでしょう。
私もやはり、お世話になること限りませんでした。
全盛期の頃は、そもそも夏川の本を
非常に多く売ってもらった本屋さんの1つ。
でも、それ以上に、
かつて出版社の編集者をしていたころ、
毎週のようにここを訪れては
企画を探していた時期があったんですね。
それは最初に転職した小さなビジネス書版元です。
それまで私は半分、印刷会社のような出版社にいて、
自分で企画を立てたことはありません。
企画が通ってないと、自分のやるべき仕事がない。
それで
「手伝いでもいいから何かやらせてくれ」
と言うのですが、そこの社長さんがやはり
「さすが!」という人だったんですね。
「お前、そこに座っていて企画が見つかると思うか?」
「いや、思いませんが、
どうしたらいいかわからなくて……」
「おい、売れている本って、どこにあるんだよ?
みんなどこで本を買うんだ?」
「本屋さん……」
「じゃあ、そこで探してこいよ!」
それで会社に出勤しては、
「行ってきます!」と言って、
1日中、本屋に行っている……(苦笑)
「あいつ、何しにこの会社に入ってきたんだ?」
と周りから言われながらも、
社長はそんな新人を放置してくれていたわけです。
そのとき何度も訪れたのは、
この八重洲ブックセンターです。
本屋さんは新人編集者を歓迎し、
たまに店員さんが情報も教えてくださいました。
お陰様で、数ヶ月後には私もどんどん、
企画を出して本作りをするようになった。
やがてベストセラーもだし、大きな出版社に移籍し、
今は作家として
本を書くようにもなっているわけです。
私にとっては学び舎の場所でもあったんですね。
そんな場所も、いよいよなくってしまう日が来た。
でも、八重洲ブックセンターはまだ健在だそうで、
ここも新ビルが建ってから、何年か後に再開するそうです。
なんだよかった!
その日を楽しみにしましょう。
今までありがとうございました。