「鉄を熱にいたうきたわざれば、
きず隠れて見えず」
近くのお寺に貼ってあった、
日蓮さんの言葉だそうです。
刀などを鍛え直すとき、
鍛冶屋は再びそれを高熱にかけるのですが、
そうしないと隠れている傷が
見えないということ。
一見、きれいな刀のように見えても、
長い間に使っていれば、
傷はたくさんできているわけです。
ただ、それを知るには、
自身を熱にさらし、鍛える必要があるんですね。
なるほど、私たち仕事を続けてベテランになると、
自分のやり方をある程度、
極めたように思ってしまいます。
でも、本当は“傷だらけ”なんですね。
傷だらけの自分自身を、
何度も鍛え直せば、
何歳になって私たちは成長することができる。
でも、そうあるためには、
進んで困難に身をさらさないと、
本当の問題が見えてこないんですね。
昨日は大手企業に勤めている酒井さんと、
自分たちの仕事のあり方について
さまざまに会話をしました。
その中でも話し合ったのは、
「どうすれば皆、
もっと本を読んでくれるんですかね」
ということです。
なるほど考えてみれば、
どんなに本が売れなくても
ずっと私は仕事をくれる出版社さんや
プロデューサーさんに恵まれてきた。
本当の意味で、熱に自らをさらし、
傷をあぶり出すような努力を
怠ってきたのかもしれない。
それでちょっとジリ貧を招いているとすれば、
そろそろ鍛え直さねばならない時期なのかも
しれません。
トライ&エラーを繰り返し、
世間の声に耳を傾ける場を、
つくらなければなあ……。
まだまだやるべきことは、
たくさんあるんだなあ……と思いますね。