「師匠からは『やめとけ』と言われたけど、
これで後悔したら一生悔いが残ると思って
土俵に上がりました」
こちら110年ぶりの快挙だそうですね。
新入幕の力士での優勝。
東前頭17枚目、尊富士関の言葉です。
10場所での優勝も、
明治時代の記録を打ち破る最速記録だとのこと。
横綱やら大関やら、
上のほうの力士がちょっと現在、
不甲斐ない……ということもあるのでしょうが、
これからの相撲を盛り上げるうえで
スターが現れたことは嬉しいですよね。
その優勝の仕方も立派でした。
なんせ前日戦で足の怪我をして、
車椅子で帰ったりしていました。
千秋楽も出場は不可能で、
不戦勝になるかどうか……という話ですが、
なんのなんの。
痛み止めの注射を打っての強行出場で、見事に勝利。
あれは貴乃花だったか。
当時の小泉首相がトフィーを渡すときの
「痛みをこらえて、よく頑張った!」を
思い出しました。
でも、「いたみをこらえて……」なんて、
ちょっと令和の現代には、
時代錯誤にも聞こえますよね。
どちらかといえば
「頑張りすぎはよくない」と言われる
今の世の中です。
「若者は打たれ弱い」と言われるし、
長い人生を考えれば、無理をして失敗するよりも、
ゆっくり機会を待ったほうがいい
……という考え方もある。
これはその通り……なんですが、
実際の世界をみれば
「本当はがんばる必要なんてなかった」という
ケースはいくらでもあります。
たとえばジョギングなどをしていて、
「今日はちょっと腰が痛む感じがするから、
やめようかな」と思ったとき。
でも、「昨日もサボったから、強行してみよう!」
なんて動き出してみたら、
すぐにアドレナリンなんかも出て、
全然、辛く感じもしなかったりする……。
それで後からギックリ腰になったりしたら
世話もないのですが(苦笑)、
ようは「やってみれば、大したことなかった」
ということは、世の中にたくさんあるわけです。
「上司に話したら、簡単に承諾してくれた」とか、
「始めて会合に参加してみたら、意外に楽しめた」とか。
些細すぎて、尊富士さん奮闘に比べたら
申し訳ないのですが、
つまりは「痛みを堪えてがんばる」のでなく、
ちょっと好奇心で
「痛みの先の世界をのぞいてみよう」という発想も
私たちには必要なのではないか。
ダメならダメで、すぐ引き返せばいいわけです。
ところで110年ぶりの新幕内優勝でしたが、
調べると110年前の達成者は、
その後、関脇までで終わっているようです。
がんばるべき時があるとすれば、尊富士さん。
むしろ「これから」なのかもしれませんね。