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- 武士道が「11刷」になりました!
先日はブログで、
「武士は食わねど高楊枝」の話をしたのですが、
https://www.kenjabook.com/2024/05/16/
私が現代語訳した『武士道』の本が、
なんと11刷になっていたようですね。
通知で初めて知りました。
致知出版社さん、アップルシードエージェンシーさん、
ありがとうございます!
すごいですよね。11回の重版なんて。
2012年から12年間も売れ続けている本。
素晴らしい仕事に、私も携われたものです。
新渡戸稲造さんが本を書いたころには、
世界にとっては「謎」であった日本人。
そんな武士道的な日本は、
この12年間の間で、かなり失われていったことが
事実なのでしょう。
それでも、まだ日本人には、
武士道的なものが残っているなあと感じたのは、
昨日の大谷翔平さんに関するニュース。
奥さんの始球式をお断りし、
代わりに小児病の障害をもった子供に
機会を与えてあげた……という話でしたね。
大谷選手はキャッチャーを務めたそうです。
調べると、案外と野球選手の奥さんは、
始球式でマウンドに立っているようです。
ドジャースでもベッツ選手の奥さんなどが
過去にやっているそうですし、
日本ではタレントやアスリートだった、
鈴木誠也選手は松井裕樹選手の奥さんも
始球式をしています。
だから特殊なことではないのですが、
大谷選手の奥さんは辞退する。
そうでなくても、一歩引いて控えめにしている様子は、
ワイドショーでもたびたび話題にされます。
謙虚だし、大谷選手もまあ、照れくさいんでしょうかね。
でも、『武士道』の本が書かれた明治時代、
「日本人女性は虐げられている」ということは、
たびたび世界から批判される材料になっていました。
確かに今でも日本女性の社会進出は、
世界基準に達していません。
労働環境において改善しなければならない点は、
多くあるでしょう。
ただ、「武士道」によって築かれてきた
日本人の伝統においては、
「決して日本人は男女差別をしていない」というのが、
新渡戸稲造さんの主張でした。
じつに『武士道』では、20ページ以上にわたって
「女性の教育と地位」について語っているのですが、
よく紹介されるのは「愚妻」という表現です。
愚かな妻……なんて、
ハラスメントではないかと言われそうですが、
新戸部さんは、こう説きます。
「同じような言葉で、愚夫とか豚児とか
拙者なども日常的に使われているのです」
「日本人は、自分自身の妻を褒めることは、
自分の一部を褒めることと同じだと考えているのです。
そして私たちは、自分を称賛することは、
少なくとも悪趣味だとみなしているのです」
一歩引く奥さんの姿勢は、
まさに武士道的といえばその通りでしょうし、
大谷選手はそんな美徳を持った方でもある。
まあ、ただドジャースが求める国際的な家族像においては、
少しこれから世に露出することも
必要になるかもしれません。
しかしながら「武士道」の世界では、
主君に命を捧げる夫に対し、
妻は命を捧げて夫不在の「家」を守る
マネジャーでした。
だから尊敬された武将の奥さんは多い。
男女の共同作業で
「武士」という地位は守られていたわけです。
これはある意味、夫との相談で、
最善のアイデアを打ち出していく大谷家と
同じなのかもしれません。
なんでも国際基準に合わせるのでなく、
「あるべき日本的な夫婦」の見本に、
彼ら2人にはなってほしい気もしますよね。
ちなみに新渡戸稲造さんは、
当時めずらしい国際結婚をした方。
武士道を書くきっかけは、その奥さんが作っています。