優しくて恐ろしい「海に住む観音様」

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7月15 日は「海の日」。
平成8年から始まっている祝日ですが、
現在は7月の第3月曜日。

もともとは明治天皇が初めて
船での巡航を行なった日だそうで、
「海の恩恵に感謝し、
海洋国日本の繁栄を願う日」と
定められています。

でも、そういえばしばらく海を見ていないな……。

海辺に住んでいる方はともかく、
私は東京の「港区」という、
かなり海と接した地域に住んでいながら、
日常生活でほとんど
「海」を意識したことはありません。

ただ、その昔は
「もっと海を身近に感じていたのだろうな」と
感じさせるのは、画像、
こちら『魚籃観音霊験記』という
江戸時代に書かれた書物だそうです。

この「魚藍観音」というのは、
海に住んでいる観音様で、
海産物などの恵みをもたらし、
船の安全を守ってくれる
仏教における神様のような存在。

といって本来の仏教には
そんな観音様なんていないのですが、
中国で創造され、日本でも密かに
海辺の町では信仰されたらしい。

そして魚藍観音様は、
魚を入れる籠を持った美女に化け、
たびたび海辺の集落には
様子見にやってきたそうなんです。

港区にある「魚藍坂」は、
近くにある「魚藍寺」からの地名ですが、
この観音様を祀っている場所だったんですね。

基本的に人に恵みをもたらす観音様ですが、
魚売りの娘の姿をしているときは、
その美貌から、たびたび求婚されることがあったとか。

すると観音様である彼女は
求婚した男性と仲良くなり、
会話していく中でだんだんと相手を教化し、
やがて一生を通して妻帯しない
出家僧にしてしまうそうです。

現代ではさながら
出会い系サイトで会った男性に布教する
どこかの宗教教団……といった感じですが(苦笑)、
これも神聖なる海の領域を冒した罰なのか?

そんなふうに、
海は恵みをもたらす場所であるとともに、
「踏み越えてはいけない畏れるべき場所」として
認識されていたわけですね。

これが港区の真ん中辺りの話ですから、
海が見えない場所でも、
信仰や禁忌の痕跡は残っているもの。
探してみると面白いかもしれません。

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