翻訳の「面白さ」と「難しさ」

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9月30日は、
世界的に「翻訳の日」なのだそうです。
だから画像には、
私が“翻訳”した本を並べてみました。
それぞれについては、サイトの
古典ページ→こちら
を参照くださいませ。

この「翻訳の日」というのは、
ローマの時代に聖書をラテン語へと翻訳した
聖ヒエロニムスの命日にちなんでいます。
紀元420年のこと。
今から1604年も前の話ですね。

実は彼の仕事は、
「翻訳」という仕事の本質にも関わっています。

というのも、もともと聖書は、
旧約も新約も、古代のアラム語やヘブライ語で
書かれていたようです。
ただ、キリスト教が広まってからは、
当時の国際的な文語であった
ギリシャ語に翻訳されたものが
使用されていたとのこと。

でも、ローマ時代に
一般的な言語として使用されていた言語は
「ラテン語」です。
なんとか「皆が気軽に読める聖書を」という要望は、
かねてからありました。

そこで元々、哲学の研究をしていたヒエロニムスさんに
白羽の矢が立ったわけです。
彼ならギリシャ語にも堪能しているから、
膨大な聖書も上手く翻訳してくれるだろう……。

ところが、さまざまなギリシャ語の
「翻訳版」を参照するうち、
ヒエロニムスさんは、
訳の食い違いに気づいたんです。
どれが正解なのかわからない……。

ならばと、
この仕事を完璧に成し遂げたかった彼は、
ヘブライ語やアラム語の習得をしながら、
正確な訳を仕上げていったのです。
その作業にはトータルで20年以上を要しました。
これがやがてローマ・カトリックの
公式普及版の聖書になっていくんですね。

なんでも彼が修道院で作業をしていると、
1匹のライオンが入ってきたとか。
皆が逃げるなか、ヒエロニムさんはライオンに近づき、
そっと足に刺さった棘を抜いてあげたとか。
ライオンはその後、彼と仲良しになります。

つまりは非常に穏やかで、
楽しく翻訳の作業もしていたということ。
ひたすら自分の使命に徹する人が、
最後に大仕事を成し遂げるわけですね。

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