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名プロデューサーが天才絵師に描かせた「蛇」
- 2025/1/6
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本日から大河ドラマ、
『べらぼう』が始まりましたが。
NHKらしからぬリアルな「吉原」。
暴力シーンや残酷なシーンも、
民放では怒られそうなレベルのリアルさで、
最近のNHKは攻めてますよねぇ……。
で、今年の干支にちなみ、
こちらもかなりリアルな蛇とトカゲですが、
描いたのは日本を代表する浮世絵師、喜多川歌麿。
大河ドラマの主人公・蔦屋重三郎が企画した、
歌麿の出世作、『画本虫撰(えらみ)』に
掲載されているものです。
(出典: 国書データベース)
ちなみに『Art of 蔦重: 蔦屋重三郎 仕事の軌跡』
という本に、詳しい解説もあります。
蔦重と出会ったばかりの歌麿は、
まだパッとしなかった絵師です。
ただ、「見たものをそのまま忠実に描ける」という
天才的な能力を持っていて、
虫などの絵を見事に精密に描くことができた。
そこで蔦重は、狂歌師たちに彼を紹介し、
「虫やら小動物についての歌を詠んでもらい、
彼が描いた絵と組み合わせる」
という企画を考えたわけです。
古より行なわれてきた歌人の遊び、
「虫合わせ」に引っかけたんですね。
蛇のほか、登場するのは、
蝶や蜻蛉、コオロギやカエルですが、
写真もなかった時代に
読者はそのリアルさに驚きます。
狂歌ブームもあって
『画本虫撰』は大ヒットします。
それをやらせながら、蔦重は歌麿に
別なものも取材させ、
やっぱりリアルに描けるよう鍛えさせていました。
何をかといえば、場所は吉原。
男女の営みを描く「春画」だったんですね。
いわば陰と陽。
アカデミックとポルノの両立みたいな
両極端の才能開発だったのですが、
インパクトの大きさもあって
やはり『歌まくら』という画集は大ヒットします。
こうして日本を代表する絵師となる
喜多川歌麿が世にでる下地は
できあがったんですね。
その才能を一方向だけでなく、
まったく異なるジャンルで発揮させることで
世の中に驚きをもって認知させる。
蔦重がいかにプロデューサーとしての才覚に
優れていたか。
この売り出し方だけでもよくわかると思います。
今も学ぶ要素の多い蔦重のマーケティング戦略、
ドラマからも多くのことが学べそうです。