「めまぐるしく変わる世の中にあって、
研究のためには私情を捨てなければならない。
個人の都合で行動することは、
我が国の医学を岐路に陥れることになる」
こちらは現在、千円札の顔になっています。
北里柴三郎さんの言葉。
拙著、『奮い立たせてくれる科学者の言葉90』で
紹介しているものです。
1月29日は、柴三郎さんの誕生日。
生誕152年になります。
画像は、私の地元ですが、
東京大学附属の医科学研究所病院。
そもそもはドイツのコッホ博士に
医学を学んだものの、
受け入れる病院がなかったため、
福沢諭吉らが投資して彼のために作った
「伝染病研究所」が発端になっているとか。
ちなみに古い1号病棟の建物は、
関東大震災のあとで作られたもの。
まだ病院として現役ですね。
ノーベル賞もとっているコッホ博士に学び、
破傷風に、コレラに、ペストに……と、
さまざまな伝染病の治療に実績を出した
北里柴三郎博士。
ただ、自身でノーベル賞をとれなかったのは、
論文等で研究成果を発表することをせず、
患者さんへの臨床ばかりあけくれたから
……と言われます。
ペストが日本に流行したときも、
ワクチンの開発より、
まずは猫を大量に輸入したりして、
ネズミの駆除の陣頭指揮に立ったとか。
「あなたがやるべきじゃないだろう」
と思うのですが、
誰もやる人がいなければ、自分がやる。
「命を守るために最優先でやるべきこと」に
徹した人だったんですね。
あげた言葉も、
そもそもは医学界の権威だった大先生を
真っ向から非難したことに対し、
批判の言葉を述べた大作家、
森鴎外さんに宛てたもの。
「ああ、医学の発展のためなら、
自分はどんな恩人にでも、堂々と反意をぶつけるよ」と。
世に蔓延した中傷に、真っ向から応えたんですね。
そういう人でありたいものだ……。
1000円札でその顔を見たら、
思い出すようにしたいです。