ガリュウメディア連載の電子出版講座を、賢者ブログでも掲載させていただいていますが、今回は2回目です。
電子出版と聞いてもピンと来ないと思いますが、早い話が、これを利用すれば容易に誰でも「本が出せる」というメリットはあります。むろん「それでも紙の本が出したい」というニーズはあるやもしれませんが、前回も述べたように、自費出版などはお金のムダ。
もちろん「自分には興味がない」という人もいるでしょうが、実はこれからの時代「本のような出版物を著者として書いている」ということが、とても重要な時代になってくるような気がしています。
その辺りのことを今日は述べてみましょう。
●なぜ、あなたは本を書くべきなのか?
本を書くメリットとは何なのか?
ときどき自社や自社商品の宣伝、あるいは自分の活動の宣伝のために、多額の資金を投じて本を出すという人がいます。それはとても出版社から見れば有り難い話ですが、本人にどれくらいのメリットがあるかといえば、正直微妙なところです。
もちろん出版物でないと伝わらない商品、というのもなかにはあります。編集者だった経験でいえば、たとえば健康商品であったり、特殊な住宅販売などには、著者も本を出して成功だったということがないわけではありません。
ただ、ほとんど場合は、出版社の資金源として有り難いことになるだけ。かつて私がいた小さな出版社では、たまにお医者さんが出してくれる自費出版が、いいキャッシュ稼ぎになっていました。
たまに研修講師の方にも、「形だけでも本を出したほうが集客できる」と考える人はいます。ただ編集者だった経験からいえば話は逆、むしろ「人気の講師を探して本を出させる」ということを出版社は狙います。もう「まず本を出して自分を売る」という時代ではなくなってきているんですね。
ただ、それでも私は「本を出す」ことが、ビジネスパーソンとして重要と思っています。
なぜかといえば、「本を出せる」ということが、その人の専門性の証。それくらいの専門家でないと、世に引っぱりダコになるビジネスパーソンにはなれない……ということなのです。
●ビジネスを極める人は、本が出せるのは当然
本を書くことを目標にしろ……というのは、そもそも私自身が述べ始めたことではありません。じつは私の師匠でもある、自己啓発書の作家、あるいは大脳生理学者として数々のベストセラーを出している佐藤富雄先生の説でもあります。
「口ぐせの効果」あるいは「女性向けの啓発書」で有名な佐藤先生ですが、もともとは農大を出て、ビタミンの研究をしながら会社の役員にもなったビジネスパーソンです。ただ仕事がら、「健康」には非常に関心をもっていて、小さな出版社から難しい本を結構出していました。
そうして書き続けるなかから、「自分の論」というものが育ち、後にそれを普遍的なテーマに結びつけることで大成した。自分の専門性というものが、本を書くことによってつくられていったわけです。
これはある意味、当たり前のことで、たとえば「専門」の世界で働く学者さんというのは、「論文」が認められてナンボの世界です。日本の場合、まだ「コネ」のようなものも根付いていますが、それでも理系ではとくに「論」が認められないと学会での地位が認められません。
ビジネスパーソンも、じつは同じ。たとえば、あなたは「営業」の世界で何年も仕事をしていたとする。そうしたら、あなた独自の「営業論」といったものが、すでに築かれているはずです。それはおそらく、他で活躍する営業のエキスパートとは、違うものであることでしょう。
でも、企業側にとって見れば、たとえばヘッドハンティングをすることを考えたとき、向こうの会社のエキスパートにするか、あなたにするかはわからない……。
でも、ここであなたが「自分の営業論」をまとめた「論文」を出していたら、話は変わってきますよね。
これはブログや、単にホームページでうたった宣伝文句ではない。「論」だからこそ、意味のあることなんです。
次回は自分の例をあげて、「本による自分のブランド化」ということを述べますが、その前に一つの例。「賢者の書店」から先日、講師として活動したばかりの竹田篤史さんという方の『悩んでいるなら心の声を聴きなさい』という本です(http://kenjabook.jp/library/pg103.html)。
一冊書いたことで、すでにこの方は、出版社に提示できるような企画をつくり、また生徒さんに提示できるさまざまな研修テーマを思いついている。「書いてみる」ことの効果は、想像以上に大きいのです。