本日は夏川が読んだ本の紹介。
紹介するのは寺田真理子さんの新刊、
『古典の効能』
(本体1700円、雷鳴社)というものです。
寺田真理子さんは、翻訳家であるとともに、
「読書療法」の専門家をしておられます。
つまり「本」を通して癒しを得たり、
問題解決のヒントを見つけたりする技術を
世の中に普及させる活動をなされているのですが、
そんな観点から「古典」を読み解こうとしている本かな、
という印象です。
古典といっても、主に取り上げているのは、
『古事記』『万葉集』『枕草子』の3冊。
「好転」「戦略」「酒脱」「遭遇」「喪失」
という5つにテーマで、
本から抽出できる5つのエピソードを紹介しています。
心理学的なハウツーと組み合わせて、
実用的的に使える本に仕上がっていますね。
何より私が印象的だったのは、
『枕草子』についての記述です。
ご存知のようにこちら、平安時代に
清少納言さんが書いたエッセイで、
学校で皆さんが習ったと思います。
紫式部さんとともに、女流古典文学の最高峰ですね。
この『枕草子』、じつは少納言さんが支えた女性、
藤原定子さんを意識して書かれています。
定子さんは一条天皇の皇后で、
美人であり、皆に慕われた明るい女性だったと言われます。
ただ、藤原家の政争に巻き込まれ、
没落したのち、25歳の若さでこの世を去っています。
彼女の女御として、また親友として
ずっと慕ってきた少納言。
彼女を元気づけるとともに、
自分自身の気持ちをも前に向かせるために
文章による発信を続けようとした。
これが『枕草子』になったんですね。
本当は元気づけようとしている定子さんが、
少納言を元気づけるために
貴重な紙をプレゼントする話はほのぼのしますが、
そんな「癒しの文章」だということを知れば
新しい読み方がどんどん生まれてきます。
同時にそんなに古くから「文章を書くこと」は、
人の心にエネルギーを注ぐ要素として使われてきたんです。
現代人がこれを全く生かせていないのは、
もったいないことですよね。
みんな「古典」を読みましょう!(笑)