夏川が読んだ本の紹介ですが、
500ページ近い大著です。
『LIFE SPAN 老いなき世界』
(デビッド・A・シンクレア著、東洋経済新報社)
という本。
著者はオーストラリア出身の科学者であり、
バイオテクノロジー企業の創業でもあります。
壮大な内容で本書が言いたいのは、
「老化は病である」ということ。
とくに分子生物学における最新知識から、
「老いる」というのは、どういうことなのか?
それを防ぐ手段はあるのか?
過去における研究成果から未来における可能性まで、
現代においてアンチエイジングの研究が
たどり着いたところを解説しています。
実際、シンクレアさんは、
私たちはやがて150年は生きるのが
当然になってくると言っているわけです。
まさかと思うでしょうが、
江戸時代の平均寿命は30歳〜40歳。
戦争があったとはいえ、1947年には50歳でした。
わずか70年にして、人生の長さはすでに
倍くらいに延長しているわけです。
その恩恵は、結局のところ
「科学の発達」に依存しています。
どんなにワクチンを否定する人でも、
結局のところ親世代、祖父母世代で、
天然痘や結核、ポリオなど、
私たちは人類の存続を脅かしてきた病原菌を
科学の力で家系から追い出して生きている。
どんなに遺伝子組み換えに反対する人でも、
ごく普通の家畜の肉に、野菜や果物など、
自然界にあり得ない交配によって生み出された
バイオテクノロジーの産物を、
私たちは何世紀も前から伝統的に食べ続けています。
野生のイネとかリンゴとかを食べたら、
もうお腹壊しますよね。
人間が狩猟生活を捨てたときから、
すでに私たちの生活は「自然のまま」から
離れてしまっているわけです。
ただ。著者はこうも言っています。
「より良い暮らしを送りたい。
恐怖も危険も暴力もできるだけ少なくして
生きられるようになりたい。
私たちにそう思わせる
やむにやまれぬ衝動こそが自然なのだ」
つまり私たちは、生物としての本能に従って、
より長く生きるための科学や技術を
発展させてきたわけです。
それを受け入れていくことこそが、
結局のところ人間という生物が生き残った理由であり、
これからも生存していための道なのだろう
……ということですね。
本書の最後は科学を超え、
社会のあり方までにも及んでいますが、
いろんな考えの方が世にはいるのでしょうが、
受け入れるべき事実も多くあるのだと思います。
長く楽しく生きられるなら、
それ以上のこともありませんしね!