13日は大谷翔平さん、
松井秀樹選手を抜くメジャー175本塁打と、
通算1000本安打を達成しました。
(まあ、試合は負けましたが)
一方でずっとニュースに取り上げられていましたが、
元通訳の水原一平さんも出頭。
保釈され、あとは確定待ちになりましたが、
一応はひと段落なのか……。
いずれにしろ、こんな状況で
精神的ショックも大きい中、
大谷さんが結果を出し続けているのは素晴らしいですね。
そこで画像の大谷さんの本の隣は、
先日に「重版しました」と紹介した
夏川現代語訳の『貞観政要』です。
この本を大谷さんとともに取り上げるのは、
本書の主人公である皇帝・太宗にも、
実は似たエピソードがあるんです。
それは本書の3章に上奏文が掲載されている
太宗の部下だった人物、
「張薀古」という人に関連する話になります。
「皇帝というのは、あらゆる人にとって
基準とならねばならない」
「冠の飾りが目を覆っても、民衆の不満を見抜け。
飾りが耳を覆っても、聞こえない民衆の声を聞け」
そんなふうに、少し平和な時代になって
驕ってしまっている皇帝に彼は
「まだまだ国の混乱は続いているよ」と不満をぶつけ、
軌道修正させたんですね。
皇帝は「その通りだな」と張に感謝しました。
その3年後、その張薀古から、
自分の友人が無罪の罪で捕まっている……という
報告があったんです。
その友人は心を病み、妄想を言っているところ、
犯罪者にされてしまったらしい。
まあ、正義を訴えてきた張の言うことですから、
間違いはないのだろう。
皇帝は罪人を恩赦することにします……。
ところが後に、この元罪人と張その人が、
ギャンブルに嵩じまくっていることが報告されたんです。
まるで誰かのように、
今でいう依存症になってしまったのでしょう。
本当に賭け事は、人を変えてしまったんですね。
そして皇帝はどうしたかといえば、
怒って張を処刑してしまったんです。
お前は俺を裏切った……。
あんなに信頼していたのに……。
感情に任せての決定でした。
でも、皇帝はそれからずっと後悔したんですね。
少なくともギャンブルにはまる前、
彼が正義感から上奏した言葉は間違いないし、
私がそれに導かれたことだって、
まさしく真実であったはず!
そこで、皇帝は裏切りのことは度外視し、
まずは死刑そのものを簡単な思いつきでは
実行できないようにした。
そして自分を軌道修正してくれた張薀古の言葉を
ずっと大切にしたというんです。
だから皇帝の言動を記録した『貞観政要』にも、
張の上奏文がしっかりと掲載されているんですね。
人には誰でも「正」の面と、「負」の面がある。
「負」の面にとらわれて「正」の面を忘れると、
その人への評価が
ネガティブなものばかりになってしまう。
それは他ならぬ、自分自身にとっても
マイナスにしかならないわけです。
もっとも皇帝でさえ感情的になってしまうのですから、
簡単なことではない。
大谷さんにとってもそうでしょうが、
私たちは進まなければいけない。
だからこそ賢者のエピソードは、
心に刻んでおきたいですね。